全く役に立たない院試合格体験記

京都大学医学研究科人間健康科学専攻総合医療科学コースの院試に合格しました.学部も京都大学医学部人間健康科学科なので内部進学です.なので内部向けの内容になると思います.ネット上に総合医療科学コースの院試受験記は調べた限りではなかったので,記憶に新しいうちに書き残そうと思います.

※この内容は2023年募集のものです.

 

入試について

www.med.kyoto-u.ac.jp

大学のHPを見るのが最も手っ取り早いです.学力検査については外国語の外部試験を提出するのと,専門の試験受けるというものです.

外部試験はTOEICTOEFLのスコアを提出するのですが,ほとんどの人はTOEICを提出してました.他大などを受験してそっちでTOEFLが必要になるとかでなければ,対策のコストや受験費の観点からしTOEICの方がいいと思います.

専門科目は各研究室の研究に関連した内容が問われます.なお,基礎科目というのは存在しません.自分が志望する研究室の分野を解かなければいけないという制約もありません.専門科目の出題範囲は大学から明確なものは提示されていません.過去問を見て対策するのもいいですが,きちんと勉強するならその教授が受け持っている授業の教科書を参考にするのがいいです.外部の人でもシラバスは検索すればひっかかるのでそこで確認すればいいと思います.

ocw.kyoto-u.ac.jp

入試までにやったこと

TOEIC

昨年までは外国語200点,専門100点というわけのわからない配点でしたが,今年からは外国語100点,専門100点に変更になりました.昨年までの外国語に偏重した配点のせいで,TOEICはガチでやらないと落ちるという意見を先輩や教授から聞いてたので,3月くらいから対策を始めました.大学に入学してからほぼ全くと言っていいほど英語は勉強してこなかったので,最初に受けた3月のTOEICは580点という悲惨な結果となり,流石にヤバいということで真面目に勉強して5月の2回目の受験で790点まで伸ばしました.*1

先輩たちには800点ほしいと言われましたが,まあ790あれば実質800やろ……といいながらここで切り上げました.まわりの友達は800中盤くらいが多かったです.勉強に使ったのはスタサプと公式問題集で,どっちもかなりオススメです.TOEICは継続と試行回数ゲーなので三回生からちゃんとコツコツ対策するのがいいです.院試に限らず就活でも使えますし,なにより院試の直前期になってから焦る危険性が減ります.*2

専門科目

専門の過去問は4月あたりから学部の窓口で受け取ることができます.特に予約とかもいらないのでふらっと立ち寄って入手できます,ありがたいですね.窓口は人間健康科学棟ではなく医学科の棟であることだけ注意です.先程書いた「専門科目は各研究室の研究分野に関連する問題が出る」というのは過去問を見たときにそう感じました.なので今年の募集研究領域を見つつ,この分野の問題は今年も出るんじゃないかなといった感じで勉強する内容を定めていきます.問題は大体15題出題され,そのうちの4題を選択して解答するというものです.私の場合は画像解析,血液学,放射線,データ処理,ニューラルネットワークの分野を対策しました.選んだ分野がめちゃくちゃ理工系なのは私が大学でこれらの講義を履修していたのと,単にあまり勉強してこなかった生物系の科目を再び勉強して暗記をするというのがしたくなかったからです.*3

画像解析

講義資料がわかりやすかったのと,指定されている教科書もとてもわかりやすかったのでこの対策はやりやすかったです.

画像処理全般の入門的な内容が乗っていて読んでて楽しいしわかりやすいですが,講義で取り扱ったり試験に出る項目としては広すぎます.5,6,9章あたりが頻出で,11,12,13章も聞かれるかなって感じです.

画像解析の担当の教授に「理工系の進路を考えている人は読むべき」と言われて買ったものです.二年前の過去問ではほぼ確実に離散フーリエ変換で大問が構成されていて,ディジタル画像処理の方はフーリエに関する記述は薄いのでその対策にとてもよかったです.フーリエ以外の項目もめちゃくちゃわかりやすいので院試にかぎらずこの本のなにかしらの項目で気になるものがあれば買ってもいいと思います.

血液学

暗記は嫌いですが,血液学に関しては講義で得られる予習プリントが院試にかなり使えそうだと感じたので,それを徹底的に復習しました.

講義で使われていたのはこの教科書で,実際にこの教科書を中心に講義されていましたが,明らかに高いのでメルカリで探しましょう.私は第1版のものを使っていましたが特に支障はなかったです.

放射線

募集研究領域の項目を見ると,担当教員で分野が被っているものがあり,放射線は例年2題出題されていました.一つの分野を勉強するだけで2題解答できるなんてお得!!!ということでこの分野を勉強しました.

これもメルカリで安く転がってます.2題あるうちの一つはこの5,6,7,8章から出題され,もう一つは強いていえば第1章の内容が出題されました.ただ後者は計算問題がしばしば出題され,この教科書には詳しいことは書いていないので別途勉強する必要があります.コンプトン効果半減期の問題が頻出で,計算問題の雰囲気は高校物理に近いです.教科書以外だと診療放射線技師国家試験 対策ノートは役にたちました.

radiological.site

データ処理

講義が開講されていたとか教科書があるというわけではないのですが,毎年似たような問題が出題されている傾向にあったのでこれも勉強しました.ハフマン符号化,n進数,浮動小数点演算あたりが掴めていると解けます.

ニューラルネットワーク

これは研究室でそういう勉強をしているので出題されれば解けるだろうというヤツです.わかりやすいのはヨビノリとかでしょうか.

www.youtube.com

www.youtube.com

これらの勉強を7月あたりから開始し,8月頭くらいに過去問演習をしました.たまに教科書にも講義資料にもない知識が登場してヤベーってなりながらそのあたりの知識の埋め合わせもしました.

当日のこと

試験会場には8:30集合ということで8:00過ぎくらいに大学に到着しました.あたりには見たことのない顔,つまり外部生らしき人がちらほらいて,試験時間が近づくにつれて知った顔もどんどん増えていったのですが,ここである異変に気づきます.みんなスーツであると,自分だけが私服だと.募集要項を読めばわかるのですが,専門試験と同日に面接が行われます.どうやら世間一般では面接はスーツで来るべきらしいです.*4この時点で少々動揺します.友達曰く「毎年4,5人ほど私服で来て若干浮くらしいと先輩から聞いた」ということなので,まあ毎年いるにはいるものらしいのですが,最終的に本当に自分だけしか私服の人はいなかったのでびっくりしました.来年以降受験する皆さんは変なところでメンタルを消耗したくなければフォーマルな格好で行くべきです*5

 

試験が開始して問題用紙を開くと,過去問と結構形式が違うことに驚きます.具体的には,放射線の問題が1題しか出題されなかったり,データ処理の問題が出題されなかったり,この時点で自分の勉強してきた分野のうち2つが消滅し,しかも自分の志望分野の問題が見当たらなかったこともあって解ける問題が3題になってしまいました.さあ大変.ということでとりあえず対策してきた問題をかき集め,他の問題から何か良さげな問題を探し,試験を終えました.内容としては,

  • 血液学:復習プリントのおかげでだいたいわかった.染色体異常の略称でひとつだけわからないのがあった.
  • 放射線:全部解けたと思っていたが,試験終了後に友達と話してて一問文章を読み違えていそうなことに気づく.
  • 画像:ハフ変換が出題されるのは流石に聞いてない.一応講義で聞いた内容だったのである程度は埋められたが,極座標の変換のあたりの記述に自信が無い.
  • フーリエ:今まで一度しか出題されたことがない(しかも大昔),離散ではないタイプのフーリエ変換が出題された.前半は数Ⅲ~一回生の微積くらいの証明があって,最後の小問は 1+{\tan{x}}^2 = \frac{1}{{\cos{x}}^2}の置換でいいのでは?と思ったけど,フーリエ変換を用いた誘導が用意されていたのが謎.問題用紙と計算量が噛み合っていないのと,試験終了直前に計算ミスに気づいて,それまでの計算の上に横線で取り消して別の場所に計算結果を書いたのは今思うとまずかったかもしれない.

といった感じです.試験が終わったあとに問題を落ち着いて見ると,統計の問題も解きやすそうな印象を感じました.

試験が終わるや否やすぐに面接があります.大体試験番号順ですが,結構前後します.そういうものなので気にしなくていいです.呼ばれるまでは筆記試験を行った会場で待機することになるのですが,待機の間は携帯等の電子機器の使用は禁じられるので,面接前に願書に書いた志望理由などを見返したい場合は前もって印刷しておくことをオススメします.聞かれるのはざっくりというと志望動機と修士後の進路・研究の内容・研究の進捗(内部生だから?)あたりです.試験直後なので専門の筆記のことについて尋ねられないのは嬉しいです.5分程度で終わりますし,自分のところがたまたまそうだったのかもしれないですが終始なごやかな雰囲気で終わります.

終わった後の手応えは,出せる最大値は出せたと思う反面,私の対策してきた分野が尽く傾向が変わったことの同様が抜けずに,その足で気を紛らわすために友達と嵐山へと向かいました.かき氷と湯葉チーズが美味しかったです.

 

感想

もう二度と受けたくないです.精神に悪すぎる.特に併願もしていなかったので落ちた先のことを考えておらず,発表の日まで院試に落ちた後のその先みたいなのを眺めてハードモードすぎるだろ!!!ってなってました.

倍率なのですが,総合医療科学コースに関しては38人受験して36人受かってました.ちなみに当日周囲を見渡すと3人欠席していて実際に受験に来たのは35人かあと思ってました.イヤなんで?????*6

研究室のボスから院試勉強はしっかり勉強するように言われましたし,実際にうちの研究室を受けて落ちた人も過去に数人いたらしいので,これはたまたま運がよかっただけだと思います.昨年は50人ほど受験していて7人ほど落ちているのも観測していたので,マジで時と運の良さです.*7

勉強は絶対にするべきです.これは試験に受かるためというよりも精神の安寧を保証するためです.

私から送ることのできるアドバイスをまとめると

  • 外国語の外部試験はなるべく早くから対策した方がいい
  • 専門科目は絞りすぎない
  • よほどの強心臓でなければスーツで来たほうがいい

です.来年の春から頑張ります.

 

 

 

*1:4月にも受けるつもりだったが某疫病の濃厚接触&感染疑いになってしまったので受験できなかったし受験料は帰ってこなかった

*2:スコアは当日提出可能なので,タイムリミットは7月の受験回

*3:高校の頃に物理選択だったからか,生物系の問題の記述解答をどう書けばいいのか未だにわかっていないのもある

*4:ちなみに募集要項にはスーツで来いということは書いてない

*5:正直ここを一番伝えたくてこの記事を書いた

*6:そりゃネット上に院試受験記なんて存在しないよなあ(タイトル回収)

*7:大学受験で一浪してて良かった~~~