”NOTES ON PLAYING ELLINGTON” 「エリントンの楽曲を演奏する時の注意事項」 和訳

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Alfred Musicが出版しているEssentially Ellington: Jazz at Lincoln Center Libraryシリーズのスコアの2,3ページ目には"NOTES ON PLAYING ELLINGTON",つまり「エリントンの楽曲を演奏する時の注意事項」というものが書かれています.これが結構興味深いことをたくさん書いているので,共有の意味を込めて和訳します.

※この文章はLarge ensembleについて記述しています.Money Jungleを始めとしたEllingtonのセッション作品についてではありません.

※意訳を所々に含みます.誤った表現や分かりづらい表現があれば指摘をお願いします.

原文:https://academy.jazz.org/ee/wp-content/uploads/2014/09/Playing_Ellington.pdf

NOTES ON PLAYING ELLINGTON 

現在の大編成のジャズ演奏の少なくとも95%は,三つの伝統から生まれています.それはカウントベイシー楽団,デュークエリントン楽団,そして小編成のオーケストレーションです.ジャズに興味がある若いプレイヤーは,即興演奏の機会や現実的な理由(15人よりも4,5人の方がまとめるのがずっと簡単である)によって小編成に魅了されるようになるでしょう.以前はダンスバンドが行っていた,アンサンブルをするミュージシャンを訓練するという仕事は学校が引き継いでいます.ベイシー楽団の人気とそのシンプルなスタイル,ブルースとスウィングに重点を置いていることから,優れた教育者たちはジャズのアンサンブル演奏を教えるために,もっぱらこの伝統を採用しています.カウントベイシーのスタイルは素晴らしいのですが我々がジャズと呼ぶ偉大な音楽の下で発展した重要なスタイルの多くを取り上げていません.デュークエリントンの音楽に対する包括的で多彩なアプローチは,その代替案を提供します.

エリントン音楽の様式の豊かさは,教育者にも演奏者にも同様に巨大な難題となっています.ベイシーの音楽では,規則がほぼ一貫しています.一方でエリントンの音楽では,規則に対する例外がたくさんあります.それはジャズの言語に関するより深い知識を要求します.カウントベイシー楽団からデュークエリントン楽団に移ったクラークテリーは,「カウントベイシーは大学,デュークエリントンは大学院」と言っています.エリントンの音楽の知識があれば,どんなビッグバンドの演奏もできるようになります.

以下に続く文章は,エリントンの音楽の大部分について,演奏上の決まりごとをリストにしたものです.

  1. これらの曲のエリントン録音を何度も注意深く聴きましょう.どんなに洗練された聞き手でも,最初は聞き逃してしまうような微妙なニュアンスがたくさんあるはずです.エリントンは自分の録音を真似ることは一切望んでいませんでしたが,これらの決定版を知ることは,音楽家が新しい演奏を生み出す際に,より賢明な選択をすることにつながります.エリントンの音楽は,特定の人のために書かれたものではありますが,すべての音楽家が自己を表現するためのすばらしい発想を得られるように設計されています.加えて,録音と転写では,わずかな音符の違いが聴こえます.これは意図的なもので,録音された音楽の本来の意図から間違いや改変があるためです.プレイヤーには楽譜に書かれているものを演奏してもらうとよいでしょう.
  2. スウィングフレージングが一般的に用いられています.バラードや偶数8分音符,ラテン語などの表記を除き,3連符のフィールが主流です.これらの場合では,8分音符は等価に扱われます.
  3. アンサンブル演奏には指揮系統があります.各セクションのリード奏者は自分のセクションのフレージングや音量を決め,セクションの仲間はそのリードに従わなければなりません.サックスやトロンボーンがトランペットと一緒に演奏する場合は、リード・トランペットに決定権があります.リードのアルトとトロンボーンは、最初のトランペットの音を聞いて,それに従うべきです.他のサックスやトロンボーンも同じように、リードしている人に従わなければなりません.クラリネット金管セクションをリードするとき、金管クラリネット奏者をオーバーブローしないようにしなければいけません.つまり,バンド全体のことを考えた際に1番トランペットは実際には "2番 "を吹いていることになります.これが効果的に行われれば、指揮者に残されたバランス調整の仕事はほとんどありません.
  4. エリントンの音楽では,各奏者が自分のラインの個性を表現することが大切です.セクションリーダーをサポートし,それに従うことと,アンダーパートの個性を引き出すことの音楽的バランスを見つけなければいけません.各奏者は音楽を通じて自分の個性を表現するよう奨励されるべきです.エリントンの音楽の中では,アンダーパート(2nd, 3rdなど)はリードと同じ音量で,同じ信念を持って演奏されます.
  5. ブルースの抑揚は,こうした機会がリードで発生したときだけでなく,常にすべてのパートに浸透している必要があります.
  6. ビブラートは,音を暖かくするためにかなり使われます.サックスのビブラートは最も頻繁に官能的な面を表します.普段は調和のとれたパッセージで重いビブラートをかけ,ユニゾンではわずかなビブラートをかけます。トランペットのビブラートは熱さと力強さを表現することが多いです.和声的なパッセージでは少しビブラートをかけ,ユニゾンではビブラートをかけません.トロンボーンのビブラートは高貴なイメージを持ちます.スライドビブラートは使用しません.リップビブラートを少しかけると良い場合があります.ビブラートのスピードを合わせるようにします.ユニゾンはビブラートをかけずに演奏します.
  7. 上昇するにつれてクレッシェンドし,下降するにつれてディミヌエンドをします.フレーズの上の音にはナチュラルアクセントを,下の音にはゴーストをつけます.アルトサックスとテナーサックスは,他のセクションとうまく調和させるために,低音域でサブトーンを使用する必要があります.エリントンの楽曲はもともとダイナミクスがない状態で書かれています.楽器の大きな音は大きく,小さな音は小さくというように,楽器が本来持っている性質が生かされています.例えば、トランペットのハイCは大きく,ローCは小さくなります.
  8. 4分音符は特に表記がない限り,一般的に短く演奏されます. ピッチの上下にある長いマークは,フルバリューを示します.8分音符は,休符が続く場合や他の表記がない場合を除き,フルバリューで演奏されます.4分音符より長い音はすべてフルバリューで演奏されます.つまり,その音に休符が続く場合は,休符が表示されている部分の音を離します.例えば,小節の1拍目にある2分音符は,3拍目に解放されます.
  9. レガート的な背景音でない限り,長い音はある程度ピアノフォルテで弾き,アクセントをつけてから音量を小さくします.これは、動く部分が持続音より聞こえるようにするために重要です.長い音符はただ我慢するのではなく,ビブラート,抑揚,クレッシェンド,ディミヌエンドなど,生命力と個性を与えることが大切です.この音楽には多くの抑揚があり,その多くは高度な解釈によるものです.直線は非音階的なグリス,波線はスカラ(半音階またはダイアトニック)的なグリスを意味します.一般に,すべてのリズム図形にはアクセントが必要です. アクセントは音楽に生命と揺らぎを与えます.これはとても重要なことです.
  10. エリントンの音楽は個性的です.1つのパートに1人が原則であり,つまり人数が多いから,力が必要だからといってそのパートの人数を増やしてはいけません.1つのパートに2人以上いると,コンサートバンドのようになり,ジャズバンドのように聞こえなくなります.
  11. これはアコースティックな音楽です.増幅器は必要最低限にしてください.最高のホールでは,増幅器はほとんど必要ないはずです.全員が大きな音を出す必要があります.バンドのバランスをとるのは指揮者の仕事です.ギターを使用する場合は,ホローボディでアンプなしのリズムギターを使用し,シンプルな3音ヴォイシングを使用するべきです.アコースティック弦のベースは必須です.平凡なホールや貧弱な設計のホールでは,ベースとピアノは少しブーストが必要かもしれません.このような場合は,マイキングを行い,ハウスサウンドシステムに接続することをお勧めします.そうすれば,アンプを使うよりもずっと良い音色が得られるはずです.リズムセクションの主な役割は,伴奏であることに留意してください.ベースはトランペットのような大きな音を出してはいけません,それは不自然であり,過剰な増幅,悪い音色,限られたダイナミクスにつながります.モニターは使わないでください.モニターは誤ったバランス感覚を与えます.

  12. コード・チェンジのないソロやリズム・セクションのパートは,そのまま、あるいは少し装飾を加えて演奏してください.コード・チェンジのあるソロやリズム・セクションのパートはアドリブで演奏してください.しかし,書かれたパッセージは,私たちのジャズの遺産の重要な部分であり,プレーヤーが自分の特定のソロや伴奏の機能を理解するのに役立つので,学ぶ必要があります. ソロの場合は,コード・チェンジを覚えておくとよいでしょう.ソロはテクニックや音域,音量を誇示するための機会としてではなく,エリントンが提供した興味深いテーマの素材をさらに発展させるための素晴らしい機会としてとらえるべきでしょう.

  13. 真鍮用のプランジャーという表記は,金物屋で買ったゴム製のトイレ用プランジャーという意味です.Kirkhillは非常に良いブランドです(特に,私がウィントン・マルサリスに貸して彼が紛失したような古いゴム製のものが見つかればなおさらです).トランペットは5インチ径,トロンボーンは6インチ径を使用します.Plunger/Muteの表記がある場合は,ピクシーミュートをベルに挿入し,プランジャーをミュートの上に置いて使用します. ピクシーはシカゴのHumes & Bergから入手可能です."Tricky Sam" Nantonとエリントンのプランジャートロンボーンの椅子の後継者はピクシーを使用しませんでした.むしろ,それぞれがノンパレル(ブランド名)トランペットストレートミュートを採用していました.ノンパレルはもう廃業してしまいましたが,トム・クラウンのノンパレル・トランペットストレートミュートがそれに近いものです.これらのミュートは素晴らしい音(人間の声に非常に近い)を生み出しますが,唇だけで修正しなければならないイントネーションの問題も生じます.チューニングスライドを動かせば簡単なのですが,ピッチを修正するのに苦労するのもサウンドの一部です.もしこれが無理なら,ピクシーを使いましょう.

  14. ドラマーはバンドの事実上のリーダーです.ビートを刻み,アンサンブルの音量をコントロールします.ビッグバンドでは,少人数で演奏するときよりも大きなバスドラムを使用する必要があります.22インチが好ましいです.バスドラムは1拍ごとにソフトに(ほとんど聞こえないくらいに)叩きます.これをバスドラムのフェザリングと呼びます.バンドにとって非常に重要なボトムを提供します.バスドラムの音は,「ブーン(boom)」とも「ドーン(thud)」とも言えない,その中間の音です.キックは大きめのドラムが必要です.小さめのドラムでは聞こえません.このスタイルで重要なのは,とにかくタイムを守ることです.2と4のリムノックは,スイングを固定するために使います.フィルを演奏するときは,少なければ少ないほどよいです.
  15. 管楽器奏者はソロとソリのために立ってください. 中程度から長時間のソロのときは,休符を囲んで前に出てきてください.pep section(トランペット2名,トロンボーン1名,プランジャー/ミュート使用)も同様です.
  16. 管楽器奏者はアタックとリリースに細心の注意を払いましょう. 全員で音を当てて,みんなで終わらせる必要があります.
  17. ブラスは短い音を正確に演奏する必要があります.音符は舌で止めなければいけません.ルイ・アームストロングのように!
  18. 何よりも,全員が常にスイングに集中することが大切です.偉大なベーシストの チャック・イスラエルが言うように,"ジャズで最も重要な3つのことはリズム,リズム,リズムの順である."です.また,バッバー・ミレイ(エリントンの最初のスタートランペット奏者)は、"It don't mean a thing if it ain't got that swing. 「スウィングしなきゃ意味がない」"と言っているように.

 

訳注

Schools have taken over the task (formerly performed by dance bands) of training musicians to be ensemble players. 

以前はダンスバンドが行っていた,アンサンブルをするミュージシャンを訓練するという仕事は学校が引き継いでいます.

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Swing Eraは(1933~1947)ビッグバンドのスウィングが米国で最も人気のあった時代でした.Artie Shaw, Benny Goodman, Glenn Millerといった白人ミュージシャンの登場でジャズという音楽が人種の垣根を超え,さらにジャズミュージシャンがレコーディングを始めることでラジオからジャズを流すようになったことで商業面でも成功し,ダンスミュージックとしてのジャズが発展,確立していきます.

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ディズニーシーのビッグバンドビートを見たことがある人は特にイメージしやすいでしょう.ビッグバンドビートとは言うけど主役はビッグバンドというよりもミッキーを始めとしたダンサーの方々の印象が強く残ると思います.後ろのバンドに注目するのは実際に楽器をやっている人がほとんどではないでしょうか.

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白人ビッグバンドのナンバーはIn The MoodやSing Sing Singなど,吹奏楽で人気の曲が多いですが,これはアドリブの要素が少なく,ハーモニーもわかりやすいためと言われています.In The Moodのトランペットソロと言われた時に一つしか思い浮かばないひとも多いかと思います.

なお,第二次世界大戦の影響で人数の必要なビッグバンドの勢いは衰え,Count BasieDuke Ellington,Stan Kenton,Woody Hermanといった人気のバンド以外のビッグバンドは解散を余儀なくされていき,結果的に「At least 95% of modern-day large ensemble jazz playing comes out of three traditions(現在の大編成のジャズ演奏の少なくとも95%は,三つの伝統から生まれる)」な状態になっていきます.

Clark Terry, who left Count Basie’s band to join Duke Ellington, said, “Count Basie was college, but Duke Ellington was graduate school.”

カウントベイシー楽団からデュークエリントン楽団に移ったクラークテリーは,「カウントベイシーは大学,デュークエリントンは大学院」と言っています.

Clark Terryはベイシー楽団に1948~1951年,エリントン楽団には1951~1959年に在籍していました.

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Clark Terryが在籍している頃のCount Basie楽団.何故かSextetですが,この頃のCount Basie楽団は戦後に一度ビッグバンドを解散させた後で,コンボを主体として活動していました.なお戦前のBasieのビッグバンドをオールドベイシーとも呼ぶらしいです.

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こちらは1958年のEllingtonのアルバム"At The Alhambra".Newport UpやJuniflipでClark Terryはフィーチャーされています.確かに楽曲の構成やハーモニーはEllingtonの方がかなり複雑であり,"Count Basie was college, but Duke Ellington was graduate school."というフレーズも納得が行きますが,Clark Terryが在籍していた頃のCount Basie楽団とDuke Ellington楽団はそもそもバンドの構成が大きく異なっていたので一概に二者の音楽を比較することは出来ないことを留意しておきましょう.この文章は何かとBasieとEllingtonを二項対立させたがりますが,それだけ両者が現在のビッグバンドにおける強い影響力と魅力を持っているということでもあります.

Ellington’s music, though written for specific individuals, is designed to inspire all musicians to express themselves. 

エリントンの音楽は,特定の人のために書かれたものではありますが,すべての音楽家が自己を表現するためのすばらしい発想を得られるように設計されています.

Ellingtonの楽曲は楽団の各メンバー(通称エリントニアン)のフィーチャー曲が非常に多いです.挙げればキリがありません.

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各エリントニアンについては日本語だと「デューク・エリントンの世界」というサイトが良いです.というかエリントンに関する情報(エリントンの歴史,交友関係・エリントニアン・楽曲・オススメのアルバム)は日本語だとここが一番詳しいです.

sites.google.com

自分がソロを担当する曲はDuke Ellington楽団では誰が演奏していたのかということは最低限知っておくべきことですし,余裕があればその人の他のフィーチャー曲を聞くことも良いでしょう.

In addition, you will hear slight note differences in the recording and the transcriptions. This is intentional, as there are mistakes and alterations from the original intent of the music in the recording. 

加えて,録音と転写では,わずかな音符の違いが聴こえます.これは意図的なもので,録音された音楽の本来の意図から間違いや改変があるためです.

Alfred Music社が出版しているEllingtonの楽譜にはTranscribed by David Berger(Jazz at Lincoln Center Orchestraの初代の指揮者兼アレンジャー)と書いています.Ellingtonが書いた楽譜を直接出版しているわけではないのでちらほら違いが存在します.例えばリズム面で8分音符や音価に違いが存在したり,主観でしかない強弱記号が書かれていたり…… さらに楽譜が参考にしている演奏と自分たちが演奏したいテイクが異なれば尚更です.第一項に書かれている「Listen carefully many times to the Ellington recording of these pieces.(これらの曲のエリントン録音を何度も注意深く聴きましょう)」が全てです.

The triplet feel prevails except for ballads or where notations such as even eighths or Latin appear.

バラードや偶数8分音符,ラテンなどの表記を除き,3連符のフィールが主流です.

Triplet Feel

triplet fell(3連符のフィール)は上の図で表されるフィールのことです.用語集ではSwingは以下のように説明されています.

the perfect confluence of rhythmic tension and relaxation in music creating a feeling of euphoria and characterized by accented weak beats (a democratization of the beat) and eighth notes that are played as the first and third eighth notes of an eighth-note triplet. Duke Ellington’s definition of swing: when the music feels like it is getting faster, but it isn’t.

音楽におけるリズムの緊張と緩和が完璧に調和し,陶酔感を生み出すもので,アクセントのある弱音(拍の民主化)と,8分音符3連符の1番目と3番目の音として演奏される8分音符によって特徴づけられる.デューク・エリントンのスイングの定義とは,音楽が速くなっているように感じるが,速くなっていないときのことである.

スウィングを厳密に定義するのは非常に難しく,言外の部分も多いのですが,詳細を省いた最も簡単な説明はこの図でしょう.エリントニアンであるClark Terryがスウィングの発音部分に関する説明をしている動画の日本語訳がYouTubeに挙がっています.

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If this is done effectively, there will be very little balancing work left for the conductor. 

これが効果的に行われれば、指揮者に残されたバランス調整の仕事はほとんどありません.

この注意事項は「指揮者の存在するラージアンサンブル」を対象にしていますが,指揮者の存在しないラージアンサンブルも多いでしょう.その場合はバンドメンバー間で第三項を守る必要があるでしょう.

Straight or curved lines imply nonpitched glisses, and wavy lines mean scalar (chromatic or diatonic)glisses. In general, all rhythmic figures need to be accented.

直線は非音階的なグリス,波線はスカラ(半音階またはダイアトニック)的なグリスを意味します.

非音階的なグリスはトロンボーングリッサンドがもっともわかりやすいでしょう.スカラ(スケイラー,つまりスケイルに沿ったという意味かもしれません)なグリスはトランペットやサックスのキーを用いるグリスです.これらの区別は上昇系よりもロングトーンからのフォールで頻用されるように思いますし,その場合は統一の必要があります.

More than one on a part makes it sound more like a concert band and less like a jazz band.

1つのパートに2人以上いると,コンサートバンドのようになり,ジャズバンドのように聞こえなくなります.

コンサートバンドとは吹奏楽の形態の一種で,60人程度で構成されるものです.第四項を見るに,各奏者の個性が表出するジャズバンドの良さが無くなってしまうことに対する懸念のようにも思います.体力的な面を考慮して1パートの人員を増やす場合でも,同時に同じパートの人が演奏することは避けるべきです.ただし,ユニゾンの場合はその限りではありません.

This is acoustic music.

これはアコースティックな音楽です.

acousticは「アンプを用いない,楽器本来の響きをもつ」の意味です.これは実際にエリントン楽団の演奏がacousticな環境で演奏されていたことに由来します.この観点を持つことは大事である一方で,最新のEssentially Ellingtonの演奏は全奏者にマイクがついていたりするのであまり気にしすぎることもないと思います.

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特に昨今の情勢でオンラインでのライブも増えてきたため,今や各奏者のマイクはライブの際に必須と言っても良いでしょう.

練習はacousticな環境で行われることも多いので,そこで生まれたサウンドの雰囲気を本番でも大事にするのがベターでしょう.

Kirkhill is a very good brand (especially if you can find one of their old rubber ones, like the one I loaned Wynton and he lost).

Kirkhillは非常に良いブランドです(特に,私がWynton marsalisに貸して彼が紛失したような古いゴム製のものが見つかればなおさらです).

www.faucetdepot.com

こんな感じのメーカー.サウンドにこだわるなら輸入してもいいでしょうし,Seriaなどの百均で買っても良いでしょう.ただしサイズには注意しましょう.

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www.faucetdepot.com

確かにこのMarsalisのplungerはKirkhill C11 Red Rubber Force Cupですね.

plungerに関してはEssentially Ellingtonが参考動画をたくさん出しているのでそれを見るのも良いと思います.

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Nonpareil has gone out of business, but the Tom Crown Nonpareil trumpet straight mute is very close to the same thing.

ノンパレルはもう廃業してしまいましたが,トム・クラウンのノンパレル・トランペットストレートミュートがそれに近いものです.

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www.tomcrownmutes.com

これです.こちらもこだわるなら統一しても良いかもしれません.Tom Crownのミュートは日本でも取り扱っている店は多いです.

the pep section (two trumpets and one trombone in plunger/mutes)

pep section(トランペット2名,トロンボーン1名,プランジャー/ミュート使用)

わかりやすい例だとRockin' In Rhythmのクラリネットトロンボーンソロの後やPurple Gazelleのイントロ後にテーマに入る部分など.これらの場面でpop sectionは前に出ることが推奨されています.

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Bubber Miley (Ellington’s first star trumpeter) said, “It don’t mean a thing if it ain’t got that swing.” 

Bubber Miley(エリントンの最初のスタートランペット奏者)は、"It don't mean a thing if it ain't got that swing. "と言う.

これでアドバイスを〆るのカッコいいですね(個人の感想)

Bubber MileyはCootie Williams以前のプランジャー奏者で,非常に短命(1903~1932)ながらも印象的な演奏を多数残しています.

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なお,全体の翻訳で省略した箇所が一つあります.

Any deviations or additions will be  spelled out in the individual performance notes which follow.

逸脱や追加があった場合は,この後の個別のパフォーマンスノートに明記されます.

第一項の直前にこのような記述があります.NOTES ON PLAYING ELLINGTONはEssentially Ellington: Jazz at Lincoln Center Libraryシリーズのスコアの冒頭につけられているため,この記述は各曲のアドバイスであると読み取れます.

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例えばC Jam BluesだとNOTES ON PLAYING ELLINGTONの次のページはこの様になっており,その次のページに楽譜が来ます.これもかなりの情報量があります.ORIGINAL RECORDING INFORMATIONではどのアルバムで聞けるか,誰が演奏しているか,ソロは誰が担当しているかがわかります.REHEARSAL NOTESではDavid Bergerのコメントが,曲によってはWynton Marsalisのコメントがあります.出版されているものに関してはこれを読むとより楽曲への理解が深まるでしょう.

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こんにちは,Tsmgiです.京都で過ごす1999年生まれの大学生です.普段はnoteで日記を書いています.

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上の日記はその日の出来事や感じたことを徒然なるままに書いたものですが,ここではその中でもう少し踏み込んで書いてみたいなと思った内容を加筆したり,あるいは長いスパンを要する記事を書いていきたいなと思います.